プライバシーを守るためにAIサービスを選んだのに、支払いの段階で本名やカード情報を渡してしまっては本末転倒です。せっかくVenice.aiのようなプライバシー重視のサービスを使うなら、課金まで含めて足跡を残さない、というのが本来の筋でしょう。

この記事では、接続専用のウォレットを用意し、Monero(XMR)などのプライバシーコインからKYCレスでUSDCにSwapして、Veniceに匿名で課金するまでの流れを、ひとつずつ追っていきます。

なお、暗号資産の扱いは自己責任です。価格変動や送金ミスによる損失は取り戻せません。少額で試しながら、自分が理解できる範囲で進めてください。

⚠️ 📍普段使っているメインのウォレットをそのまま接続するのは避けましょう📍アドレスが分かると、そのウォレットの取引履歴や残高が紐づいて見られてしまうためです。接続専用の新しいウォレットを用意するのが安全。

全体像

細かい話に入る前に、流れを掴んでおきましょう。やることは大きく5ステップです。

  1. 接続専用の新しいウォレットを作る
  2. ウォレットを選ぶ (XMR / WalletConnect対応)
  3. プライバシーコインを用意 (XMR / BTC Lightning)
  4. KYCレスでUSDCにSwap
  5. Veniceに入金 → Pro版へ

ポイントは「身元と紐づく情報を、どの段階でも混ぜない」こと。ウォレット・コイン・Swap・入金、それぞれの段で身元が漏れる経路を潰していきます。

先に押さえておきたい前提:VeniceはBase(EthereumのL2)上のUSDCを受け取ります。 単に「USDC」と言っても、それがEthereumメインネット上なのか、Base上なのか、Solana上なのかでまったく別物です。VeniceはBase建てのUSDCを前提にしているため、最終的に手元に用意すべきは Base上のUSDC です。ここを取り違えると、せっかくSwapしても送金できない・チェーンを間違えて資金を溶かす、といった事故になります。以降のステップは、すべて「ゴールはBase上のUSDC」という前提で読んでください。

ステップ1:接続専用の新しいウォレットを作る

まず大前提として、普段使っているメインウォレットをVeniceに接続してはいけません

Web3ログイン(WalletConnectなど)でサイトにウォレットを接続すると、サイト側にはあなたのウォレットアドレスが渡ります。ブロックチェーンは公開台帳なので、アドレスが分かれば、そのウォレットの全取引履歴と残高が誰でも追跡できる状態になります。メインウォレットを繋げば、過去のやり取りや資産状況がVenice(およびそれを覗ける第三者)に紐づいてしまうわけです。

そこでおすすめなのが、接続専用に新しいウォレットを1つ作ること。考え方はシンプルです。

  • 課金に必要な分だけを入れた、ほぼ空のウォレットを用意する
  • それをログイン・課金専用として使う
  • メインの資産とは完全に切り離す

こうしておけば、万が一アドレスが紐づいても、見えるのは「この用途のためだけの履歴」だけ。ダメージを最小化できます。

ステップ2:ウォレットを選ぶ

次に、その接続専用ウォレットをどれにするか。今回の用途で求めたい条件は次のとおりです。

  1. Monero(XMR)に対応している(プライバシーコインを扱うため)
  2. WalletConnectに対応している(VeniceにWeb3ログインするため)
  3. Base(EVM)に対応している(Base上のUSDCを保管・送金するため)

3つ目が今回地味に効いてきます。VeniceはBase建てのUSDCを扱うので、接続用ウォレットはBaseネットワークを表示・送金できるEVMウォレットである必要があります。BaseはEthereum系(EVM)なので、MetaMaskやRabbyのような一般的なEVMウォレットならカスタムRPCの追加程度で対応できますが、「Baseが選べるか」は事前に確認しておきましょう。

ところが、この両方を満たすウォレットは意外と多くありません。WalletConnectはもともとEthereum系(EVM)中心の規格で、Moneroは非EVM。「XMR対応」と「WalletConnect対応」を1本で両立するウォレットは少数派なのです。

候補

ウォレット XMR WConnect 備考
Cake Wallet XMR Swapが手軽。ただしWalletConnectがやや不安定なことも
Unstoppable 次の選択肢。
Stack Wallet x オープンソース。思想的に相性◎だがCake系譜に近い
Edge 老舗でUIがこなれている。インポート機能が欠如

※ ウォレットの対応状況とWalletConnect実装は更新が速い領域です。導入前に各公式の最新情報を必ず確認してください。

「1本でまとめる」か「役割を分ける」か

WalletConnectの安定性に不安があるなら、無理に1本でまとめないのが現実的な解です。

  • ログイン・入金用(WalletConnect + Base) → 接続が安定したEVM特化ウォレット(ほぼ空の接続専用。Base対応のCoinbase Wallet/Metamask推奨)
  • XMR保管・Swap用 → Monero特化のウォレット(Cake/Unstoppableなど)、ログイン用はWatchingのみのウォレットにして、Swap時の出金先として、登録しておくと楽。

Veniceに渡るのはアドレスだけなので、接続用ウォレットにXMR機能は必須ではありません。「全部入り1本」にこだわらず分離すると、不安定さの問題はかなり減ります。

ステップ3:プライバシーコインを用意する

USDCで課金するにしても、その元手をどう用意するかで匿名性が大きく変わります。ここで使いたいのがプライバシー性の高いコインです。

  • Monero(XMR) … 送金額・送信者・受信者がすべて秘匿される設計。現状もっとも匿名性が高い選択肢
  • BTC Lightning … オンチェーンのBitcoinより追跡されにくい。ただし完全な匿名ではない点は理解しておく

匿名性を最優先するならMoneroが本命です。Lightningは「ある程度の追跡耐性+使いやすさ」のバランス型と考えてください。

ここでも原則は同じで、これらのコインを入手する段階でKYC(本人確認)ありの取引所を使うと、入り口で身元が割れます。可能な限りKYCレスの手段で用意するのが理想です(このあたりは別途、コイン入手の記事で詳しく扱う予定です)。

ステップ4:KYCレスでUSDCにSwapする

このステップが、匿名課金のいちばんの肝です。

VeniceはUSDCで課金できますが、手元にあるのはXMRやBTC。これをUSDCに交換(Swap)する必要があります。ここでKYCありの中央集権取引所(CEX)を経由してしまうと、それまでの匿名化の努力がすべて無駄になります。取引所はあなたの本人情報と取引を紐づけて記録しているからです。

そしてもうひとつ忘れてはいけないのが、Swapの出口(受け取るチェーン)をBaseに指定することです。多くのSwapサービスは「どのチェーンのUSDCを受け取るか」を選べます。ここでEthereumメインネットやArbitrumなど別チェーンのUSDCを受け取ってしまうと、Veniceにそのまま入金できず、結局もう一段ブリッジが必要になります。「XMR → Base上のUSDC」を1回のSwapで完結させるのが理想です(XMRから直接Base建てUSDCに交換できるサービスを選ぶと手間が減ります)。

そこで使うのが、本人確認不要でコインを交換できる手段です。

  • アトミックスワップ … 第三者を介さず、異なるチェーンのコインを直接交換する仕組み
  • 非カストディアル型のスワップサービス/DEX … 資産を預けずにブラウザやウォレット内で交換できるもの
  • ウォレット内蔵のSwap機能(Cake / Edge など)も、提供元がKYCレスのプロバイダを使っていれば選択肢になる

具体的なサービス名

「XMRから直接、メールアドレスもアカウント登録も不要でBase建てUSDCに交換できる」、という視点で名前の挙がるところを整理しておきます。

サービス タイプ XMR 特徴
Cake Wallet 内蔵Swap ウォレット内蔵 XMRを保管したままSwap。裏で複数のKYCレスExchange(後述)を選べる。初心者に一番楽
ChangeNOW インスタントExchange アカウント不要。XMR→Base USDCに対応。定番
SimpleSwap / StealthEX / Exolix インスタントExchange ChangeNOW同様のノンカストディアルな乗換サービス。レート比較の選択肢として
THORChain / Maya Protocol DEX(クロスチェーン) ○(Maya) 完全ノンカストディアル。MayaはXMRを直接サポート。中継サーバーを介さないのが強み
Haveno 分散型DEX(P2P) BisqのMonero版。最も匿名性が高いがハードル高め

何を選ぶか迷うなら、まずは Cake Wallet 内蔵のSwapChangeNOW が手軽です。どちらもアカウント登録なしで、XMRを放り込んでBase上のUSDCアドレス(=接続用ウォレットのアドレス)を指定すれば完結します。匿名性をとことん追求するなら Maya ProtocolHaveno のような完全非カストディアルな選択肢も検討してください。

⚠️ インスタントExchange系(ChangeNOW・SimpleSwap等)は原則KYCレスですが、リスクスコアの高い取引では事後的に本人確認(いわゆる「フラグ」)を求められるケースがあります。これを避けたいなら、中継不在のDEX(THORChain / Maya / Haveno)のほうが原理的に安心です。

選ぶときのチェックポイントは次の4つです。

  1. 本人確認(KYC)を求められないか
  2. 資産を預けない(ノンカストディアル)か
  3. 手数料とレートは妥当か
  4. 出口にBase(USDC)を選べるか

上記のサービス名は執筆時点で代表的なものです。手数料・レート・対応チェーン・KYCポリシーは変動が激しいため、利用時点で必ず各公式と最新の評判を確認してください。

ステップ5:Veniceに入金 → Pro版へ

USDCが用意できたら、あとはVeniceに入金するだけです。

  1. 接続専用ウォレットでVeniceにWeb3ログインする
  2. Baseネットワーク上のUSDCで課金(チャージ)する
  3. クレジットが反映されたら、Pro版の機能が使えるようになる

入金時は、ウォレット側でも送金チェーンがBaseになっているか必ず確認してください。USDCはチェーンごとに別物なので、ここでチェーンを取り違えると着金しません。

これで、カード情報も本名も渡さずにVeniceを使える状態が整いました。

なお、Pro版にはもうひとつ「MORトークンをステーキングする」という道もあります。長く使うつもりなら、そちらの方が結果的に得になるケースもあります。損益分岐の考え方はMORステーキングの記事で詳しく扱います。 現在:FAQの記載が(MOR50→VVV100)変更されています。

注意点とリスク

最後に、進める前に頭に入れておきたいことを整理します。

  • 価格変動 … XMRもBTCも価格は動きます。Swapのタイミングで目減りすることがあります
  • 手数料 … Swapや送金には手数料がかかります。少額だと割高になりがちなので、必要額をまとめて用意するのも手
  • 送金ミスは取り戻せない … アドレスの貼り間違い・チェーンの選択ミスは致命的。特にUSDCはチェーンごとに別物なので、Swapの出口も入金時もBaseかどうかを毎回確認。必ず少額でテスト送金を
  • 自己責任 … 暗号資産の扱いはすべて自分の責任です。理解できない手順は実行しないこと
  • 情報の鮮度 … ウォレット・Swapサービス・対応状況はすぐ変わります。この記事は執筆時点の整理であり、実行前に最新情報の確認を

匿名性は「一番弱い経路」で決まります。ウォレット・コイン・Swap・入金のどこか一箇所でも身元と繋がると、そこから全体が辿られかねません。すべての段で身元を混ぜないことを意識すれば、Veniceを最後までプライバシーを保ったまま使い切れるはずです。