RSS Readerのススメ:アルゴリズムの外側で生きる情報収集術

広告収入が命のメディア企業から長年毛嫌いされ、Google Readerのサービス終了以降は「死んだ」と言われ続けてきたRSS(Really Simple Syndication)。それでも世界中の愛好家は今も使い続けています。理由はシンプルです——アルゴリズムが介在しないからです。 なぜ今でもRSSが強いのか Cory Doctorowが「エンシットフィケーション(enshittification)」と呼ぶプラットフォームの劣化——広告だらけのタイムライン、アルゴリズム優先のおすすめ、行動データの収集——これらすべてを、RSSは根本から回避します。 アルゴリズムに支配されない:自分が選んだソースの記事だけが、時系列で届きます。「おすすめ」も広告も混入しません。 既読管理が完結する:フィードを開いた時点で管理が終わります。SNSのような「見落とし」が起きにくいのが実用的な強みです。 購読リストは永続する資産:プラットフォームが消えても、フィードURLは残ります。フォロワー数もアルゴリズムも関係ありません。 ニッチな情報源に強い:個人ブログ、学術機関、政府の統計フィードなど、SNSでは辿り着けない発信者と直接繋がれます。 プライバシーが守られる:GoogleやMetaに読書履歴を渡しません。多くのFOSSクライアントはトラッキングを一切行いません。 長期的に安定:枯れた技術は安定しています。サイトがフィードを提供し続ける限り、同じ方法で購読できます。 2025〜2026年にかけて、Hacker NewsやMastodonコミュニティではRSS活用の話題が定期的に上位に来るようになりました。「アルゴリズムに支配されない情報空間を自分で構築する」という考え方が、独立系ウェブ(Indie Web)のムーブメントとともに静かに広がっています。 おすすめFOSS RSSクライアント オープン規格であるRSSには、FOSS(Free and Open Source Software)のクライアントが豊富に揃っています。費用は不要、データは売られない、ベンダーロックインもありません。 iOS & macOS ── NetNewsWire Brent Simmons氏が個人で開発・維持する、完全無料・完全オープンソースのフィードリーダーです。macOSとiOSで同期でき、動作は軽く、余計な機能がありません。iCloud同期のほか、FeedlyやFreshRSSとの連携にも対応しています。広告もサブスク料金もトラッキングも一切なく、「Apple環境でRSSを始めるならまずこれ」という評価がRedditやMastodonで圧倒的です。 Android ── Feeder F-Droid(Google Playに依存しない完全FOSSのアプリストア)でも入手できる、Androidの定番アプリです。軽量でクリーンなUI、完全オフライン対応。サーバー不要でローカル管理したい方に向いています。Mastodonコミュニティでも「Androidに移ってからずっとFeeder」という声が多く見られます。 セルフホスト型 ── FreshRSS 自分のサーバーやNASに置いて運用する、ウェブベースのフィードアグリゲーターです。NetNewsWire(iOS/macOS)やFeedMe(Android)など外部クライアントからもアクセスできます。「クラウドには預けたくないが、複数デバイスで同期したい」という方に最適な選択肢です。PHP製で動作が軽く、Raspberry Pi程度のスペックでも問題なく動きます。 セルフホスト型(ミニマリスト向け) ── Miniflux Go製の超軽量セルフホスト型リーダーです。FreshRSSよりさらにシンプルで、余計なUIを削ぎ落とした設計になっています。AndroidではFeedMeやMinifluttから、PCはブラウザから使います。「フィードリーダーはコンテンツを読む道具であって、それ自体が注目を奪うべきではない」という哲学のもとで作られています。 Linux デスクトップ ── Newsflash GNOMEデスクトップ環境に自然に馴染む、Rustで書かれたFOSSリーダーです。FreshRSSやMinifluxをバックエンドとして使えるほか、ローカルフィードの管理にも対応しています。見た目が洗練されており、LinuxでRSSを始める方の最初の選択肢として推奨されます。 Windows ── RSS Guard Windows・Linux・macOSに対応するクロスプラットフォームのFOSSリーダーです。FreshRSSやMinifluxとの連携も可能です。UIは多機能ですが、慣れると非常に強力です。 まとめ 古い技術であることは確かですが、枯れた技術は安定しています。オープンで、誰かの都合で突然消えることがなく、アルゴリズムと広告に侵食されない数少ない情報空間のひとつです。 iOS/macOSならまず NetNewsWire を入れてみてください。それだけで、広告に邪魔されず、アルゴリズムに踊らされず、自分のペースで情報と向き合える環境が手に入ります。(日本のRSSサイトはちょっと厳しい状況になってきてる。。) おまけ:このブログもRSSで購読できます このブログ(under7kg.pages.dev)もRSSフィードを配信しています。 しかも、ブログ全体を購読するよりも便利な使い方があります。カテゴリ単位、タグ単位でフィードを取得できます。 メインサイト:https://under7kg.pages.dev/ Mumble カテゴリ:https://under7kg.pages.dev/categories/mumble/ CriticalThinking タグ:https://under7kg.pages.dev/tags/critical-thinking/ 「全部の記事は多すぎるけど、特定のカテゴリやタグの記事だけ読みたい」という場合も、そのカテゴリやタグのURLをNetNewsWireやFreshRSSに登録するだけでOKです。HugoやJekyllといった静的サイトジェネレーターの強みで、すべてのカテゴリ・タグページにRSSフィードが自動で付いてきます。

June 18, 2026 · 1 min

アプリ管理はObtainiumで一本化

GrapheneOSにはGoogle Playがない。アプリの導入はF-DroidかAPKの直接入手が基本になるが、管理先が複数に渡るとアップデートの見落としが起こる罠がある。 二刀流の限界 これまでF-Droidをメインのアプリストアとし、F-Droidに登録されていないアプリはObtainiumでGitHubのリリースページから直接インストールする、「二刀流」で運用してきた。ところが、F-Droidには登録されているのにGitHubにはソースコードのみでリリース用APKが存在しないアプリがいくつかある。 こうしたアプリは、F-Droidのページから手動でAPKをダウンロードしつつ、ObtainiumにはGitHubのURLを登録してアップデートの有無だけ確認する……ど〜〜もすっきりしない運用になる。 ObtainiumにF-Droid App Page urlを登録できる! F-DroidのアプリページURLをそのままObtainiumに登録できる。いつから可能になったのかは分からぬが、 F-DroidのURLを直接登録できると分かったことで、アプリ管理の完全一本化がようやく現実的になる お気に入りアプリ その他、同様の方法が使えるお気に入りアプリも確認。(スッキリ!) Proton Pass : https://f-droid.org/packages/proton.android.pass.fdroid/ AntennaPod : https://f-droid.org/packages/de.danoeh.antennapod/ Etar : https://f-droid.org/packages/ws.xsoh.etar/ Suntimes : https://f-droid.org/packages/com.forrestguice.suntimeswidget/ Suntimes Calendars : https://f-droid.org/packages/com.forrestguice.suntimescalendars/ GrapheneOS+Obtainiumの組み合わせは、プライバシーとコントロールの両立という点でも理にかなった構成だと改めて感じる(お勧めします)。 参照 Breezy Weatherのインストールガイド 中級者向けGrapheneOSガイド

May 21, 2026 · 1 min

GnuCashをノマドに使う理由

海外でノマド生活を送るという、極めて流動的な環境において、GnuCashのような複式簿記ソフトを用いた家計管理は、単なる「節約術」ではなく、生存戦略そのものです。その重要性は以下の3点に集約される。 1.「通貨変動と購買力の可視化」:ノマドは複数の通貨(現地通貨、決済用ドル、日本円)を日常的にまたいで生活します。単なる収支管理では、為替レートの変動によって「支出が増えたのか、通貨価値が下がったのか」の判別がつきません。GnuCashの複式簿記を用いれば、各通貨を独立した勘定として正確に記録できるため、実質的な資産価値の推移を把握できる。 2.「キャッシュフローの構造的把握」:ノマドの収入は不安定になりがち、複式簿記により、単なる「今月いくら使ったか」ではなく、「現在の流動資産で、次の移動までの期間を何日生存できるか」という、生存に直結するキャッシュフローを把握できる。 3. 「税務コンプライアンスと証拠能力」:居住地が不明確になりがちなノマドにとって、どの国で、いつ、どのような性質の支出(居住費、通信費、移動費)を行ったかの記録は、将来的な確定申告や税務調査における最強の防衛手段となります。その記録の整合性と信頼性は、簡易的な家計簿アプリとは比較にならないほど高く、公的なエビデンスとしての強度を持ちます。 タイ・バンコクからポルトガル・リスボンに拠点を移す場面を想定。THBでの生活費は終了し、EURでの支出が始まる。残りのTHB(貸方)をEUR(貸方)に両替も簡単に行える。基準通貨をJPYにしていれば、移動前後の資産推移をその時期の為替レートで一本のレポートで追える。これが通常の家計簿アプリなら、通貨ごとに別アプリか、手動換算の繰り返しで行うことになる。 🌾:2022年7月よりの出費グラフ(滞在国:東南アジア、インド、ジョージア、日本) ノマド特有の財務課題 海外ノマドは以下の複合的な問題を抱えている: 課題 具体的な問題 多通貨 USD/EUR/THB/JPYが混在し、どの通貨で何を管理するか不明確になる 複数口座 日本の銀行+海外銀行+Wise/Revolut+仮想通貨取引所が並立 課税管理 居住国が変わると税務上の帰属が変わる 投資の分散 日本株・米国ETF・仮想通貨・現地不動産など資産が分散 支出の把握困難 現地通貨で使い、日本円換算がリアルタイムで分からない 🌾:US$100をジョージアン₾に両替 GnuCashが選ばれる理由 日本製の家計簿アプリは多国際通貨対応がほぼ皆無。GnuCashはノマドの実態に合わないところを余すところなく補っている稀有なアプリ。 完全無料・オープンソース — サブスク不要、永続利用可能 複式簿記 — すべての取引に借方/貸方が存在し、誤魔化しが利かない(青色申告対応) 国際通貨ネイティブ対応 — 各口座を異なる通貨で管理でき、基準通貨(JPY等)に換算したレポートが出る 株式・投資信託対応 — 価格の更新、損益計算が可能(日本株は要設定) データはローカル保存 — プライバシーが守られ、SaaS依存なし XML/SQLiteファイル — テキスト編集・Git管理・クラウド同期が容易 GnuCashの習得コスト 残念ながら利点ばかりではない。GnuCashには明確な壁がある。 複式簿記の概念 — 「借方・貸方」の思考法そのものに慣れが必要。日常の出入金を「どの勘定から出て、どの勘定に入るか」で捉え直す 他国通貨設定 — 各口座に通貨を割り当て、為替レートを手動または自動で更新する仕組みの理解に時間がかかる 情報の少なさ — 特に日本語の解説記事・ブログは非常に少ない。実務的なTipsは自分で探すか試すしかない。自助傾向が高い。 モバイルアプリの不在 — 外出先での入力は後回しになる。スマホから即入力という習慣がある人には大きな制約 🌾:公式ドキュメントは充実している ただし、これらの壁は一度越えれば以降のコストは最小になる。勘定科目の設計と初期設定に1〜2時間を費やせば、後は機械的に記帳するだけだ。壁は「入り口」にだけある。 複式簿記の基本とはいえ、最初から完璧な記帳を求めない、大雑把な入出金記録から始めればいい。 GnuCashは一度セットアップを完成させると、どこにいても・どの通貨でも・どんな資産でも、一元的に財務状況を把握できる強力なツールになる。ノマドの財務的自由を守るための「見えない経理部員」として活用してほしい。 公式: https://www.gnucash.org/ チュートリアル・コンセプトガイド: https://www.gnucash.org/viewdoc.phtml?lang=ja_JP

May 7, 2026 · 1 min