このブログでかなり批判の対象にされる日銀(中央銀行)。陰謀論まがいのものも多く見つかるの。ロスチャイルドが絡んでたりと、、まぁ、結構な誤情報も蔓延しているようなので、日銀・財務省の公式資料を基に、事実関係を整理してちょっとまとめた。アメリカのFRBとは結構な違いがあるみたいです。ちなみに、投資先としては魅力のない銘柄です。

⚠️ 主な誤情報(先にお伝え)

元情報の記述 事実
設立時の外国人株主(ロスチャイルド、JPモルガン、香港上海銀行など) 完全な誤り。日本銀行条例(1882年)では外国人の出資は制度上想定されず、開業時の資本金1,000万円のうち政府が半額、残り半額は日本国内出資
発行済株式総数「約2億株」 誤り。発行済出資証券は100万口(資本金1億円 ÷ 1口100円)
配当総額 3,900億円 / 配当率4.5% 完全な誤り。日本銀行法第53条第4項により配当率は年5%上限(固定)、配当総額は毎年ほぼ500万円のみ
伊藤博文の子孫が44.1億円の配当 事実無根
株価分割の一覧(1896年〜2006年) 出典不明・裏付けなし
2022年時点の出資者内訳「個人6.1%、法人4.3%、外国人2.5%」など 誤り。実際は下記参照

日本銀行(BOJ)— 最新データ確認版

1. 基本情報(最新)

項目 内容
正式名称 日本銀行(にっぽんぎんこう / Bank of Japan)
設立 1882年(明治15年)10月10日
法的根拠 日本銀行法(現行法は1998年施行)に基づく認可法人(株式会社ではない)
資本金 1億円(日銀法第8条)
発行済出資証券 100万口(1口100円)
上場 東証(8301)。旧JASDAQスタンダードから2022年4月に市場区分なし
総資産(2025年3月末) 729兆7,669億円
総裁 植田和男

2. 出資者構成(2022年3月末、日銀・業務概況書ベース)

開業時の資本金1,000万円のうち政府が半額、残り半額の500万円は日本国内出資。現在:日銀の出資は「政府55% + 民間45%」で法定(政府保有は55%を下回れない)。

出資者 割合
政府(財務大臣) 55.0%
個人 40.6%
その他法人 2.3%
金融機関 1.9%
公共団体等 0.2%
証券会社 0.0%

ポイント

  • 民間分(45%)の大半は**個人(40.6%)**が保有。財閥系企業ではなく、個人の短期投機目的の投資家が多いと推測されている(Wikipedia、大和総研レポート)
  • 元情報の「三井家・三菱家・岩崎家などが主要株主」「ベルギー・イギリス王室が保有」はすべて根拠不明の俗説
  • 個人出資者の氏名は非公開だが、名義書換は日銀所定の手続きで管理されており、取引・相続はトラック可能(ただし公開はされない)

2.1. 開業時(1882年)の民間出資者500万円は誰だったのか

日銀公式は「政府半額出資」と記録するのみで、残り半額の民間出資者リストは詳細に公表していません。ただし歴史資料(日銀百年史・金融研究所アーカイブ)から次のことが分かっています:

中心となった出資層

出資者層 概要
国立銀行の株主 当時全国に153行あった国立銀行(第一国立銀行など)の主要株主。渋沢栄一もその一人(後に日銀の割引委員も務める)
華族組合(華族資金) 明治14年に旧大名・公家層が組織した金融団体。国家への出資を積極的に行った
旧士族層 廃藩置県後、金禄公債で得た資産を持つ士族が国立銀行や日銀に出資
旧財閥系商人 三井・鴻池・小野など、江戸期からの豪商。ただし当時は「財閥」と呼べる規模には成長途上
地方の商人・地主 地租改正後に力をつけた地方名望家

制度上のポイント

  • 開業前のわずか4か月で株主募集が完了(相当スピーディー)
  • 松方正義が主導し、事実上国家プロジェクトとして「割り当て」的に募集した性格が強い
  • したがって「投資リターンを目的に集まった民間投資家」というより、近代国家建設への協力金の色合いが濃い

個人名リスト

元メモの「伊藤博文100株」「大隈重信50株」「三井八郎右衛門25株」などの具体的な数字は出典不明で、日銀公式資料でも確認できません。政治家個人が出資したという記録もなく、これらは俗説の可能性が高いです。


3. 出資証券の特殊性(株式との違い)

項目 一般の株式 日銀出資証券
議決権 あり なし(株主総会が存在しない)
配当率 会社が決定 年5%上限(法定)
残余財産分配 全額 払込金額+特別準備金まで(残りは国庫)
電子化 未対応(現物株券のまま/2023年法改正で電子化準備中)
売買 通常 東証で売買可能だが、現物受渡し必要で扱う証券会社は限定的

4. 配当(ここが最大の誤解ポイント)

制度

  • 1口(100円)につき年5円上限(=5%上限、日銀法第53条第4項)
  • 実質的に毎年5%満額で決議されている
  • 総額 = 1億円 × 5% = 年500万円(配当総額)
  • 配当が「兆円」「億円」単位という元メモの記述は完全な誤りです

個人・法人に流れる配当金額(実額)

配当総額500万円のうち、45%(民間出資分)=約225万円/年が民間出資者全体に分配される。

区分 出資割合 年間配当額
政府 55% 約275万円
個人 40.6% 約203万円
その他法人 2.3% 約11.5万円
金融機関 1.9% 約9.5万円
公共団体等 0.2% 約1万円
合計 100% 500万円

残りは? → ほぼ全額が国庫納付金

令和6年度(2024年度)決算 剰余金処分(2025年5月28日公表):

項目 金額
当期剰余金 2兆2,642億円
├ 法定準備金積立て(5%) 1,132億円
├ 配当金 500万円
国庫納付金 2兆1,510億円

→ つまり、「余った利益はほぼ全額が国庫(国民の財産)に納付」 される仕組み。配当は象徴的な500万円のみ。


5. ETF保有と含み益(最新)

日銀は2010年以降ETF買入を継続、2024年3月にマイナス金利解除と同時に新規買入を停止

時点 帳簿価額 時価 含み益
2023年3月末 37.2兆円 53.2兆円 約16兆円
2024年3月末 37.2兆円 74.5兆円 37.3兆円
2025年3月末 37.2兆円 70.1兆円 32.9兆円
2025年8月末 37.2兆円 約85兆円 約45兆円
2025年9月時点 37.2兆円 約85.7兆円 約48.5兆円(過去最高で、ウハウハも頷ける)

重要:ETFの含み益は配当計算には使われません。日銀は分配金(受取キャッシュフロー)と売却損益のみを当期損益に計上します(令和6年度のETF運用損益=13,826億円は分配金)。含み益は評価差額であり、剰余金には反映されない — 元情報「含み益から配当計算される」は誤り。

なお、日銀は2025年9月からETFを段階的に売却開始(残高簿価37兆円を消化するのに数十年〜100年規模と試算)。(これ給付金の代わりにならんかね?)


6. 国債保有残高(最新)

時点 保有残高(長期国債)
2022年3月末 521.6兆円
2023年3月末 576.2兆円
2024年3月末 585.6兆円
2025年3月末 574.2兆円(買入減額により減少)
2025年12月末 約503兆円(資金循環統計、3年ぶりに50%割れ)

保有国債は時価ベースで含み損が拡大:

  • 2024年3月末:▲9,433億円
  • 2025年3月末:▲28兆6,246億円(金利上昇の影響)

7. 株価(出資証券)

2025年10月末時点で25,020円前後で推移。過去10年は概ね2万〜4.5万円のレンジ。

  • 額面(払込金額)は100円/口だが、市場価格はそれと大きく乖離
  • 出来高は極めて少なく(年間数千〜数万口程度)、事実上の非流動株
  • 年間配当5円 ÷ 株価25,000円 = 配当利回り0.02% → 通常の投資対象とはならず、多くは希少性・記念保有目的

8. 出資証券の譲渡ルール(元メモの整理)

  • 譲渡は自由(法律上は制限なし)だが、日銀所定の名義書換手続きが必要
  • 政府保有分(55%)は法定下限なので売却されない
  • 「10%上限」「国会承認が必要」といった元メモの記述は現行日銀法には存在しません(旧法時代の記憶違いか誤情報)
  • 出資者名簿は日銀が管理しているが非公開

まとめ

論点 実態
誰が儲かる? 配当は年500万円のみ。個人出資者全体で年約200万円が分配されるだけ
残りの利益は? ほぼ全額(99.9%超)が国庫納付金として国へ
大株主は? 政府55%が固定。民間分の主体は個人投資家(財閥ではない)
ETF含み益48兆円は誰のもの? 実現しない限り会計に載らず、実現すれば税・準備金・国庫を経てほぼ国民に還元
元情報の「個人株主が兆円単位の配当」 すべて誤り。制度上ありえない

日銀の出資証券は「名前は株式に似ているが、実質はほぼ非流通の記念証券」であり、中央銀行の利益はほぼ完全に国庫(国民)に還元される仕組みが法定されている、というのが正確な姿です。