Veniceのすすめ:プライバシー時代のAIサービス
いろいろなLLMに「自由とは?」を聞いてみた記事で舞台に使ったのが、プライバシー重視のAIサービスVenice.aiでした。あの記事ではサービスの中身まで踏み込めなかったので、ここで改めて「なぜVeniceなのか」をまとめておきます。 ChatGPTをはじめとする主流のAIに、私たちは検索エンジンには打ち込まなかったような本音や悩みを打ち明けるようになりました。だからこそ、「その会話が誰の手に渡るのか」は、これからますます大事な問いになります。Veniceは、その問いに技術的な仕組みで答えようとしているサービスです。 ⚠️ 本記事は執筆時点の情報に基づきます。提供LLM・料金・仕様は変動するため、最新の内容は公式で確認してください。 Veniceの何がいいのか 1. プライバシーを「約束」ではなく「仕組み」で守る 多くのAIサービスは「あなたのデータを大切にします」と約束します。Veniceが違うのは、運営者ですらユーザーの入力を覗けない技術的な構造を採用している点です。 さらに、プライバシーレベルを目的に応じて選べます。 E2EE(エンドツーエンド暗号化) プロンプトをあなたのデバイス上で暗号化してからサーバーへ送信します。Venice運営者を含む中間のいかなる者も、プレーンテキストを読むことができません。「会話の内容を絶対に外部へ漏らしたくない」ときの最高レベルの選択肢です。 Private(プライベートモード) LLMの推論処理がVeniceのインフラ内で完結し、OpenAIやAnthropicといった外部のLLMプロバイダーにプロンプトが渡りません。「外部のAI企業には見せたくないが、Veniceは信頼できる」という場合に適したモードです。 Anonymize(匿名化) リクエストから個人を特定できる情報を取り除いてから転送します。外部プロバイダーへのリクエストが発生するケースでも、「誰が送ったか」を追跡されにくくする仕組みです。完全な秘匿よりも利便性を優先しつつ、足跡を最小化したいときに使います。 「どこまで自分の情報を守るか」を自分で決められる──この設計思想がVeniceの根っこにあります。 2. 多彩なLLMを同じ画面で使える Veniceでは、複数のLLMを同じUIで切り替えながら使えます。前述の「自由とは?」の記事で19個ものモデルに同じ質問を投げられたのは、まさにこの強みのおかげです。 主流の高性能モデルから、検閲の少ない(Uncensored)モデルまで揃っているのも特徴です。「無難な優等生の答え」だけでなく、モデルごとの個性や踏み込んだ回答を引き出せます。 3. 暗号通貨で匿名のまま課金できる Veniceは仮想通貨(USDC)での課金に対応しています。カード情報や本名を渡さずに支払えるので、「プライバシーのために使うのに、支払いで身元が割れる」という矛盾を避けられます。 4. Web3ログインで、登録情報すら最小に 暗号通貨ウォレットでログインすれば、メールアドレスもパスワードも登録せずに使い始められます。サービスに預ける個人情報を、限界まで減らせるわけです。 正直に言う、注意点 良いことばかりではありません。フェアに弱点も挙げておきます。 無料版で使えるLLMは限定的 … 執筆時点ではNvidia製のLLMがPrivacyモードで使える程度。本領を発揮するにはPro版が必要です 暗号通貨まわりに慣れが要る … 匿名課金やWeb3ログインの恩恵を最大限受けるには、ウォレットの知識がある程度必要です 使い慣れたUIとは少し違う … 大手サービスのなめらかさに慣れていると、最初は戸惑うかもしれません とはいえ、これらは「プライバシーを自分の手に取り戻す」ためのコストと考えれば、十分に納得できる範囲だと思います。 料金の目安 無料版 Pro版 使えるLLM 限定的(執筆時点ではNvidia製がPrivacyモードで利用可) すべて解放 API利用 × ○ クレジット なし 毎月$10分付与 料金 無料 月$18 / 年$180(執筆時点) なお、Pro版には通常の課金のほかに「MORトークンのステーキング」という道もあります。長く使うなら、そちらの方が得になるケースもあります。(自分は使えてますが、最近FAQでの記載が削除されてしまっているのでもしかしたら中断してるかも、詳細は後述のシリーズ記事で) どんな人に向くか AIに込み入った相談・本音を打ち明けることがある人 「自分のデータが学習に使われる」のが気になる人 暗号通貨を使うことに抵抗がない、あるいは学んでみたい人 検閲の少ないモデルを含め、いろいろなLLMを比べてみたい人 ひとつでも当てはまるなら、Veniceは試す価値があります。 このシリーズの歩き方 Veniceを使いこなすための記事を、順を追って用意しています。気になるところから読んでください。 Veniceのはじめ方 ── アカウント作成とログイン方法 … まずはここから Veniceに匿名で課金する ── ウォレット選びとKYCレス入金 … 支払いでも足跡を残したくない人へ MORステーキングでVenice Proに ── $払いとどっちが得? … 長く使うなら検討したい そして、実際にVeniceでいろいろなLLMに同じ問いを投げてみた実験が、「自由とは?」をLLMに聞いてみた記事です。Veniceで何ができるのか、雰囲気を掴むのにちょうどいいと思います。 ...